イベント 2019年11月4日 仙台

回復を応援し、受け入れる社会へ
2019年11月4日仙台イベント

 薬物依存症やギャンブル依存症に注目が集まるたび、「意志が弱い」「甘えている」という批判の声が上がる。しかし、依存症とは脳の機能が弱まる「病気」で、本人の意志だけではもはやコントロールできるものではない。このような誤解を解いて依存症への理解を深めてもらうことを目的とした啓発イベント「回復を応援し、受け入れる社会へ」が11月4日、仙台で開催された。トークライブでは依存症啓発サポーターを務める古坂大魔王さん、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所で薬物依存研究部長を務める松本俊彦先生、そして俳優で自身も薬物依存症だった高知東生さんらが登壇して、多くの聴衆を前にして、依存症への偏見と誤解をなくして欲しいと呼びかけた。

依存症は「脳がハイジャックされるようなもの」

 イベントが開催されたのは、JR仙台駅に隣接する商業施設AER(アエル)のアトリウム。十代の若者から年配の人まで幅広い聴衆が集った。危険ドラックの製造・所持で逮捕された過去を持つ元NHKアナウンサー塚本堅一さんが総合司会を務めたトークライブは2部構成。前半は「依存症ってなんですか?」というテーマで、古坂さんとともに、松本先生と、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんが、「依存症」に対して社会が抱くイメージと、現実とのギャップについて語りあった。
 古坂さんが、「ギャンブル依存症の家族に会ってお話を聞くまでは、どこかで依存症は本人が悪い、病気かどうかは微妙だと思っていた」と述べると、松本先生は「説教したり罰を加えたりしても解決しない」「脳がハイジャックされるようなもの」と説明。聴衆もわかりやすいたとえに大きく頷いていた。

「依存症=意志が弱い」は間違い

 続いて話題は、多くの人々が抱く「依存症=意志が弱い」という先入観について。松本先生は、薬物やギャンブルに依存する人は、周囲から散々止めるように説得されても耳を貸さず、頑なになってしまうなど、「意志が強い」という側面もあると解説。自身もギャンブル依存症だった過去をもつ田中さんも、有名芸能人のように、夢に向かって厳しい競争をくぐり抜けてきたような人でも依存症になってしまうケースを挙げて、「責任感の強さ」が症状を悪化させることもあると述べた。2人の話に共感したのは、逮捕後に鬱になって9ヶ月間回復施設に入った経験もある塚本氏。「周囲の依存症の人たちを見ると、意志が弱い人とは真逆。これまで頑張って勉強してきたような人が多い印象を受けた」と当時を振り返った。

依存症患者は「秘密」でモンスター化してしまう

 依存症という「病気」に対して、周囲や家族がどのように向き合うべきかというテーマになると、依存症患者の家族の支援をしてきた田中さんは、「タフラブ」(厳しい愛)というキーワードを挙げた。「たとえば、ギャンブル依存症の夫から”これが最後だから1万円を貸してくれ”と土下座されても貸さないこと。突き放すわけではなく、本人が自分の問題にしっかりと向き合うまで、周囲の人も我慢をする」ことが実は回復への近道になるという。松本先生は、依存症患者のいる家族は、「親の教育が悪い」「家族が甘やかしている」などと責められることを恐れて依存症を隠すケースが多いと指摘。結果、誰にも相談できず、自分たちで抱え込むと本人も家族もさらに追いつめられるという悪循環があるとして、「病気がモンスター化していく養分は“秘密”」と警鐘を鳴らした。田中さんも、「周囲とのつながりを復活させて、人に上手に依存をしてほしい」と相談の大切さを訴えた。

「かっこいい」という勘違いが恐ろしい

 トークライブ後半「わたしたちにできること」では、2016年に覚せい剤と大麻所持で逮捕された俳優の高知東生さんも参加。執行猶予中は、1年ほど引きこもり生活を送り、「死のうと思ったこともある」と打ち明けた高知さん。主治医や自助グループのサポートのもとで、ようやく少しずつ自分と向き合うことができるようになったとして、自分の失敗が少しでも世の中の役に立てればという思いを述べると、会場から大きな拍手があがった。
薬物に手を出したきっかけを問われた高知さんは、女手一つで育ててくれた母が他界したことをきっかけに、高知県から単身上京して「成り上がってやろう」と意気込む中で、大都会で薬物を使用する人々を「かっこいいと勘違い」するようになったと告白。古坂さんも、ひと昔前の若者の中で、タバコを吸っていた人間が多かったのは、それが「かっこいい」ことだと思っていたからという例を挙げ、「かっこいいというのは実は怖い」と、「勘違い」から始まる依存の危険性を訴えた。

憧れの人からの「誘い」が危ない

 仕事もプライベートも順風満帆の中で、違法薬物に手を出して人生が台無しになるという恐怖心はなかったのか。そんな古坂さんの問いかけに対して、高知さんは、「かっこつけなんです。誘いを断ったらかっこ悪いと思っていたので断れない」と当時の心境を振り返った。これを受けて、松本先生は、依存症患者の中には、憧れている人や志を持っている人から誘われて、「認められたい」という思いから薬物などに手を出してしまう人も多いと解説。これには高知さんもうなずき、「高知出身なのですごく酒が強いと思われているが、実はあまり飲めない。付き合いでしかたなく飲んでいた。この断れない感じで、麻薬にも引っかかってしまった」として、お酒の飲めない人が先輩や上司から無理に飲酒を強要されるようなこともひとつの危険だと訴えた。

本当の自分をさらけ出せる「心のジム」が必要

 依存症からの回復については、高知さんは自助グループの重要性を指摘。自身も公の場で自分の内面をここまで赤裸々に語れるようになったのはすべて自助グループのおかげだと感謝。「なんでも言い合える仲間ができた。悩んでいるのは自分だけじゃないと心が楽になった」として、自助グループを「心のジム」とたとえた。これを受けて、田中さんも、「高知さんは自分のことを正直に話すことができる方なので、いろんな人から愛されて回復できた。ロールモデルになって欲しい」と患者が悩みを打ち明けられる場の必要性を訴えた。
 最後に高知さんが、「世の中には本音を言えないで生きづらさを感じている人もいる。そういう意味では依存症は誰にでも起こり得る。だったら自分も少しでも役に立ちたい。依存症からの回復を目指す人と一緒に笑い合いたい」と今後の決意を表明すると、会場は温かい拍手に包まれた。

仙台イベント概要

2019年11月4日(振休・月)13:30~15:30 AER2階アトリウム(JR仙台駅前)

厚生労働省は、アルコールやギャンブル、薬物などの依存症に対する正しい知識の啓発と理解および依存症への偏見や差別の解消を図るとともに、依存症者への適切な治療の必要性とその家族に対する支援についての理解を深めてもらうため、今年度も「依存症の理解を深めるための普及啓発事業」を展開します。
今年度最初のイベントは11月4日(振休・月)13:30~15:30、JR 仙台駅前AER2階アトリウム(仙台市青葉区)において、以下の通り開催します。
本イベントは、依存症に対する社会の偏見をなくし、依存症者の回復を応援し社会に受け入れられる環境づくりを目指して実施するもので、仙台では初めての開催となります。
当日は、塚本堅一氏(元NHKアナウンサー)の進行で、依存症啓発サポーターの古坂大魔王氏などをゲストに迎え、依存症に関する事例映像を使いながらライブ感あふれる生トークでステージを展開します。
また、依存症に関する関連映像などを上映するほか、ミニコンサートも実施してイベントを盛り上げます。

詳しく見る(PDF)

<開催概要>

開催趣旨「回復を応援し、受け入れる社会へ」をテーマに、依存症についてゲストとともにトークライブやミニライブなどを展開し、依存症は回復できる病気であることや、排除せずに受け入れる社会づくりを一般生活者に訴求する。
開催日時令和元年11月4日(振休・月)13:30~15:30
開催場所AER2階アトリウム(仙台市青葉区)
アクセスJR仙台駅すぐ(東北線、常磐線、仙山線、仙石線、市営地下鉄)
参加方法事前申込不要。当日会場までお越しください。
参加費無料