【社会の問題としての依存症】なってしまった人だけの問題なの?
依存症とは、アルコール、ギャンブル、薬物など特定のものをやめたくてもやめられず、社会生活にまで支障をきたす状態のことです。依存性のあるものを繰り返すことにより脳のブレーキにあたる部分が壊れ、欲求をコントロールできなくなってしまう病気です。
強い心があればやめられるのでは?そもそもなんで依存症になるまでやってしまったの?―依存症当事者も自分のことを責めています。「苦しいから助けて」となかなか言えません。
依存症を当事者だけの問題としてではなく、社会との関係について、お笑いジャーナリストのたかまつななさんと考えます。ゲストは、田中紀子さん(公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表)です。
プロフィール
たかまつなな
フェリス女学院出身のお嬢様芸人として、テレビ・舞台で活動する傍ら、お笑いを通して社会問題について発信するお笑いジャーナリスト。
東京大学大学院情報学環教育部、慶應義塾大学大学院政策メディア研究科を卒業。現在はお笑い界の池上彰目指し、「笑える!使える!政治教育ショー」を行う株式会社笑下村塾の取締役として主権者教育の普及・啓発や講演会・シンポジウム・ワークショップ・イベント企画など手がける。SDGsの普及活動にも従事。
たかまつななチャンネル (https://www.youtube.com/channel/UCmV-bbmjWF4XzublsXRjxiQ)
たかまつななオフィシャルサイト(https://www.takamatsunana.com/)
田中紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代にわたって当事者家族という立場も経験。講演やイベントを通じて依存症という病気についての啓発活動や予防教育、依存症当事者やその家族に対する支援活動を行っている。著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)
ギャンブル依存症問題を考える会HP (https://scga.jp/)
【たかまつ】 皆様ごきげんよう! 出張!たかまつななチャンネル、なんとですね今回は、厚生労働省のチャンネルに出張しにまいりました!よろしくお願いします。
今回のテーマが依存症ということなんですけれどもやっぱり心配なわけですよ。
芸能界、深刻な問題ですからね。そして、依存症は本当に芸能界だけの問題でもないですからね。 ゲームをやっているお子さんにもなる可能性がありますし、パチンコとかアルコールとかも「もうちょっと! もう一回だけ! もう一杯だけ!」ってやっているとどんどん止まらない可能性があるので皆さんにも起こる可能性があります。
ということで、本日は、めちゃくちゃ詳しい先生に来ていただきまして、色々もう、私は素人なんでね。ゼロから教えていただきたいと思います!田中先生です!よろしくお願いします!
【田中】 よろしくお願いします! 先生ではなくて、ただの依存症の当事者ですので。
【たかまつ】 いやでも、先生スゴいんですよ。田中先生はですね、ご自身も依存症の経験がおありで 1500万借金をしたと。しかも完済されてる!これは先生と呼ばざるを得ないですよ。
芸能界の自粛ムード
【たかまつ】 最近の芸能界のバッシングどう思われます? 私怖いなって思って。ホントに極悪人って感じでいわれていますよね。社会が「裏切られた気分です」とか「信じていたのにショックです」みたいな。
【田中】 やっぱりでも、あれだけがんばって有名になられた方達がそれでも薬に手を出してしまったという背景には絶対何かの理由があると思うんですね。 だからそこの背景をみんな思いやるっていうような社会であってほしいなっていう風に思うのと、全然関係ない人があんなにバッシングする必要もないし、同じ芸能界にいた人たちが急にてのひら返して追い詰めるっていうのは変じゃないかなっていう風に思っているんですね。
【たかまつ】 あれって逆効果だったりするんですか?
【田中】 もう本当に一般社会にすごい迷惑で! 再犯防止法とかできているし、何とかもう一回社会でやり直せるような社会にしていこうというなかで、 「一発アウト」とかっていう言葉が作られてしまうと、薬物の人は本当に「一発アウト」なんだ、みたいな感じで門前払いになっちゃったりとかね。 芸能界の人たちは「芸能人だけに言っているんだ!」みたいなこと言うんですけど、いやいやいや、そんな線引きされませんから。 ぜひですね、芸能界は自分たちが言っていることで一般社会を追い詰めているんだっていうことがないようにしてほしいんです。
【たかまつ】 ああいうので苦しんじゃうんですか?当事者の方は。
【田中】 あんな風にバッシングされたら誰にも言えないとか、バッシングされるからバレちゃいけないと思って 相談できなくなっちゃいますよね。
【たかまつ】 抜け出したくても?
【田中】 そうです、そうです。 家族の人たちもやっぱり自分たちで家族の中で隠さなきゃいけないっていう風にどんどんなっていってしまいます。
世間の依存症に対するイメージ
【たかまつ】 その辺もじゃあ自身の甘えとかではないってことなんですか?
【田中】 そう、甘えって…
【たかまつ】 ちょっと私、スタッフさんに依存症に対するイメージということでお伺いしたんですけどもやっぱ甘えってすごい多いんですよね。
あと、だらしない自制心がないというもの。さらに、やめようと思えばやめられるのでは?というもの、上の甘えと近いと思うんですけども。自分とは関係ない世界、というのもありますね。 この番組作ろうというスタッフさんでさえ!この意識がね、依存症について仕事としてやっているからいろいろと知っているはずなのに、こういう声が出てしまうという。
【田中】 まず勉強してからスタッフをやってほしい!
有名スポーツ選手の方とか、芸能界で活躍されている方とか、あんな第一線にいられる方が甘えてるってあり得ないですよね。芸能界とか厳しい世界で。
【たかまつ】 たしかに。
【田中】 すごい努力されてこられたと思うんですね。
【たかまつ】 逆にイチロー選手はがんばってるのに依存症になってないだろっていうことになりませんか?
【田中】 さすがフェリス女学院!難しいところを突いてきますね。
【たかまつ】 これをね、世間は言うと思うんですよ。それに対しては?
【田中】 病気って例えば家族であっても、発症する人発症しない人がいるじゃないですか。
【たかまつ】 確かにインフルエンザにひとり罹ったからといって感染する人もいればそうじゃない人もいますもんね。
【田中】 人の脳細胞とか心のつくりってそれぞれなので、プレッシャーに対してどういう風に感じるかっていうのも様々ですよね。 また、プレッシャーの乗り越え方っていうことを小さい頃から学んで来たかとか周りにいる人たちの環境、弱音を吐きやすい環境にあったかとか、すごい根性論で来るチームだったかとか、そういうことによっても全然違いますよね。
どうして依存症になってしまうのか
【たかまつ】 田中さんも当事者だったわけじゃないですか。 依存症に悩まれていたわけじゃないですか。実際どういうことでなってしまったんですか?
【田中】 私はですねギャンブル依存症なんですけれども、付き合っている男の人がギャンブラーで、デートしているうちに自分もハマっちゃうっていう。女性ギャンブラーはこのパターンが多いんですよ。
【たかまつ】 そうなんですね。
【田中】 たかまつさんみたいにフェリス出身の皆さんには関係ない話みたいになっちゃうと思うんですけど 実はすごく関係があるんですよ。 例えば、実は親に決められたレールの上を行くことがすごく嫌だと思ってるんだけど…
【たかまつ】 嫌でした!慶応に入らないと人ではないとか。 ここだけの話ですけども。YouTubeを見られる能力がうちの家族はないと信じて。
【田中】 でもそうですよね。お医者様の家に生まれたらお医者様にならないととかそういうレールの上を歩まされることで、すごく自分の自尊心が下がっちゃったり自分の自由がなくて苦しかったりっていうような人たちもいますよね。そういう人が向いてない仕事をずっとやらないといけないとかっていうことで、だんだん酒量が増えてしまったり。 だから誰にでも起こりうる病気なんです。どうしても依存症というとなんかこう「社会の落伍者」みたいなそういうイメージがすごいありますよね。
【たかまつ】 そういうイメージあるかもしれませんね。
【田中】 「そういう人たちは関係ない」みたいになっちゃうんですけども、実は普通のサラリーマンの人たちにすごく多いんですね。
【たかまつ】 サラリーマンの人多いんですか?
【田中】 そうなんですよ。特にアルコールとかギャンブルとかっていうのはどっちかというと弱音が吐けないような責任感が強い人とか。 あとはね、意外に習慣性でなっちゃうんですよ。
【たかまつ】 習慣性?
【田中】 「飲みニケーション」なんて言って、みんながしょっちゅう飲みに行くような職場であったりすると誰かがアルコール依存症発症してしまったり、シフト勤務なんかにお勤めだと昼間からあんまり飲んでるわけにもいかない、でも周りはみんな仕事してるし、息抜きでできることって言うとパチンコしかないな、みたいな感じでパチンコしているうちにハマってしまうとかね。
【たかまつ】 そうなんですね。
【田中】 そういうこともあるんですよ。
依存症の治療方法
【たかまつ】 田中さん自身はどうやって解決されたんですか?
【田中】 私もやっぱり自助グループですね。 「奥さんアナタも病気ですよ」とギャンブル依存症だと(病院で)診断されて 「えー!?」「私が!?」みたいな感じでした。その時に、自助グループに行きなさいと言われたんです。
【たかまつ】 ご自身が治療する中でどういうことがプラスというか、力になりました?
【田中】 最初はホントにつらいんですよ。 そのつらさをわかってくれる仲間たちが一緒にいて色んなこと言ってくれるんですよ 「もう私ホント無理だわ!」「もうホントつらくてしょうがない!」とか「うるさい!」みたいな感じになっちゃったりすると、「怒りたい時は怒っていいから」とか「それもまた過ぎるから」とか言ってくれるんです。 「この苦しさもいつか終わるんだ」と思えるようになったり、言葉がすごく響くんですよね。
あと一番良かったのは、同じ依存症の人たちを助けるっていうことをすごくやらされるんですよ。最初は会場を取るとかお茶を入れるとかその程度のことなんですけど、スピーカー(体験発表)をやってみるとかだんだん色んなことをやっていくうちに、話がよく分かったとか励まされたとか勇気づけられたとか言われると自分に役割ができてくるんですね。 それがすごく私にとってもいいし、仲間たちにとっても回復プログラムになっている。たぶんそういうことですごく自尊心が上がって居場所ができて、自分が役に立てるというのと過去のどうしようもない経験に役割ができるわけです。そこで落とし前がつくみたいな。
依存症と向き合える社会へ
【たかまつ】 本当にこの依存症っていう問題は難しいと思いますけれども、どういう社会になればいいと思いますか?
【田中】 何らかの理由で失敗した人たちに対して、寛容さというか怒ってバッシングして排除してもいいことないので、どうやったらその人たちが同じことを繰り返さないで社会で生きていけるかな?ということを みんなで考えてもらえるような、そんな社会であってほしいなって思います。
【たかまつ】 これをきっかけに本当に依存症について皆さんに考えていただくきっかけとなったら幸いです。
最後に感想を
【田中】 依存症の問題っていうのは、なんとなくみんなが敬遠してしまうような暗くて悲しい話って思われがちなので、これからたかまつさんのような若手の芸人さんとかがわかりやすく伝えてくださることをYouTuberとしてもすごく期待しています。 どうぞよろしくお願いします!
【たかまつ】 皆さんの周りにも潜んでいる問題だと思います。サラリーマンの方が多いってホントびっくりしました。
今日お話を聞いているといつ誰がなってもおかしくないなと思ったので、ぜひいろんな人に「この人大丈夫かな?」って心配な人にリンクを送り付けてね、考えていただければと思います。 ということで、ありがとうございました!
依存症は回復することができる「病気」です。誰もが罹る可能性のある「病気」です。
ご本人、そして家族や周りの皆さん。
依存症かな?と思ったら、ぜひ依存症の相談窓口や専門医量機関、自助グループに問い合わせてください。必ずあなたの力になってくれます。
※ 言い回しや重複など動画の発言とは一部異なる記述となっています。